2022年9月14日
2018年12月、第4回谷口けい冒険基金を受賞した早稲田大学探検部が遠征隊が先日、成田空港を出発し、ネパール入りしました。
受賞後、計画の再検討、メンバーの入れ替えがあり、さらに雪上訓練なども行っていたメンバーでしたが、
コロナウイルス感染拡大により、調査隊を決行することができませんでした。
しかし、探検部部員たちは、「状況を言い訳に何もしないのは探検部員の名折れ」と各部員は可能な限りに文献調査や技量向上に励んでいました。
また、ボリビアにあるワイナ・ポトシ山(6088m)に積雪期の高所を経験し、隊員は全員残雪期に主に北アルプスの白馬岳において雪上訓練を行い、基本的な雪上生活技術と雪山登山技術を習得したり、出国一ヶ月以内に富士山に合計5泊以上滞在し、高所順応をおこなったりしました。
そして、2022年09月5日、とうとう出発のときを向かえました。
早稲田大学探検部ナカタン氷河調査隊
ネパール中西部、かつてムスタン王国が存在したこの地に周囲を6000m級の稜線に囲まれた城塞のような見た目の氷河が存在する。この未調査の氷河に実際に到達し、現地で基礎的な氷河データ収集することを遠征の目的とする。
ヒマラヤ山脈の主脈の北側は、モンスーン気候の影響が相対的に弱く、南部に比べて乾燥した気候が卓越している。このような気候条件は、氷河の形成には不都合であり、一般にこのような地域に発達する氷河は規模が小さい。しかし、ナカタン氷河は、ネパール北部に位置しながらも、周辺地域の氷河に比べて規模が大きく、周囲の地形を確認しても過去にさらに大きな形態を持っていたと思われる。
降雪量の少ない乾燥地域になぜ巨大な氷河が発達するのか。この謎を解くことは、今後の地球環境の変化を考える材料となる。また、氷河に水資源を頼っている乾燥地の人々にとっても重要な研究になる。
遠征隊の詳細はこちらより↓
早稲田大学探検部ナカタン氷河調査隊.pdf
今回目指す氷河(google earthより)
出発前のお忙し中、隊員の皆さんにインタビューをさせてもらいました。
以前お話をうかがってから(2019年9月)学生の皆さんの取り巻く状況は大きく変わったかと思います。
この3年間、探検部の皆さんは学生として、探検部として、どのように過ごしていましたか?
「学生としては時間的、空間的に拘束されなくなり、バイトや他活動の時間が作りやすくなるオンライン授業はかなり理想的でした。むしろ対面よりも学業面は充実していたと思います。
一方で探検部は対面で野外で活動を行うことにかなり依存した組織であること。そしてその活動内容を発表することに重きを置いていることから、コロナ禍での行動制限や公式活動中止に伴う発表機会の喪失は両手足を縛られたもの同然でした。しかし黙って状況を言い訳に何もしないのは探検部員の名折れと各部員は可能な限りに文献調査や技量向上に励んでいました。その甲斐あってか課外活動の制限が緩和された現在、本遠征を含めて再び様々な活動が出るようになり、賑やかさを取り戻しつつあります。」
今回のメンバーは、早稲田大学以外の方もいらっしゃるようです。どのようなつながり、思いで集まったのですか?
「探検部はそもそもインカレのサークルなので早稲田大学の学生以外も多数所属しています。今回の遠征のメンバーは部内で遠征計画が出た際に志願してきたメンバーたちです。各隊員は地域の文化に興味のある者、調査をしたい者、とにかく高い所に行ってみたい者など興味の方向性も様々です。ですので主たる目標は氷河への到達とその記録ですが、各隊員は環境調査や村の生活記録などそれぞれのテーマを持っており、その目標達成をモチベーションにしています。」
コロナ禍ということで、遠征準備もかなり苦労が多かったのではないかと思います。どのように準備をされてきましたか?
「なによりも大変だったのは日程が決められないことです。コロナの蔓延する中では半年後はおろか1ヶ月先の感染状況もわかりません。行けるかどうかもわからない計画を立案し、訓練を行うのはモチベーションの維持が大変でした。ただ一方で毎年計画を練り直す度に問題が見つかるのでそれを改善したり、遠征に行かない分他の経験値を積む時間が増えたことは結果的によかったかもしれません。」
今回、遠征を決行することたいへん大きな決断が必要だったかと思います。メンバーの皆さんの今回の遠征に対する意気込みなど教えてください。
田口さん
「探検は開ければ驚きの待っている『びっくり箱』というより正しい順番で開くことで中の宝が手に入る『からくり箱』。そう思って出来る限りの準備をして今回の計画に臨んできました。でもやっぱり中身がびっくり箱であることに期待している自分もいます。ヒマラヤの大自然は我々の想像を超える驚きと発見をもたらしてくれると確信しています。」
土肥さん
「探検というからには、行為だけでは成り立ちません。第三者にたいして新たな価値観を提示することが不可欠です。なにかを持って帰ること。空身では帰れない!!!!!」
渚さん
「探検部は情報の乏しい地域に行くことが多く、お手本なしに想像力に大きく頼って計画を作らなくてはいけません。その為、活動が成功するかどうかは神のみぞ知る所です。自分達ナカタン氷河遠征隊がここまで持ってきた海外遠征が、どのような結果になるのか、遠征隊の隊員として、今回の活動の答え合わせを楽しみたいと思います。」
吉澤さん
「今回の遠征は本当に何が待ち受けているかわからないですが、だからこそ探検しがいがあるんだろうなと、そんな当たり前のことをしみじみと考えます。どんな結果になるかそれは誰にもわからないことだけど、なんだか最高の探検になるんじゃないかなというフワッとした期待が頭のなかで渦巻いています。」
富田さん
「この遠征に(一人)100万円弱かかると聞いたとき、自分にその資金があるはずもなく迷いました。しかし、僕は20歳になっても自分で何か大きな出発をしたことがない。そんなことを思っていると大学の授業も上の空。僕は大阪から東京に通ってまで探検部で何がしたいのか?でも体は早稲田の方ばかり見ているのです。自分が一人前の人間、それは探検家という最も能動的な運動者になることが今一番必要な一歩だと思いました。自分をガタガタになるまで解体して新しい人間の練り直しをしてやる、なんでも見てやろう、そしたら人間は動き出すだろうと思うのです。僕は詩人として堂々人間の成就を目の前に見てやりたいのです。かなりアバウトですが最高に胸躍る、それはついに覚めきった探検的時間の始まりかもしれません。ヒマラヤの澄み切った空気を喉に流し込めば雲のような心も捕まえられると思うのです。南無妙法蓮華経。」
今回の冒険の成功を心より祈っています!
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