2018年6月13日
こんにちは。ピークエイド事務局です。
最近1ヶ月ぶりに富士山から東京に行きましたが、東京の温度に驚きました。
さて、「つにネパール奥地で植栽スタート!」と題して、ヒマラヤ山脈マナスル峰の麓での森林再生活動の現状をご報告していますが、今回は其の2です。
主に育苗の現状についてお伝えします。
育苗を支えるスタッフ
森林再生事業という初の試みをスタートさせるにあたり、信頼できる人材との出会いが命題でした。
これまでのネパールでの活動の経験から、現場を取り仕切る責任者の重要性をとても感じています。
今回、ピークエイドの現地カウンターパートを通じて、たまたま現在の現場責任者に出会うことができました。
彼の名前はアンタルケ・シェルパ。
数年前まで、ネパールのエベレストがある地域で、30年近く森林再生活動に携わっていました。
ピークエイドがシェルパ基金や震災時支援で、エベレスト地域で活動していた関係で、幸いなことに団体への理解があり、すぐに仕事を引き受けてもらえました。
アンタルケは単身赴任で、センターに住いを構え、毎日生活しています。
持ち前の几帳面さを生かしたきめ細かい育苗だけでなく、試験的に始めた野菜栽培においても、これまでサマ村の住民が無理だと思っていた野菜を、 驚くほど立派に生産し、住民の尊敬を生んでいます。
アンタルケが自発的に取り組んでいる野菜作りは、外国人トレッカーや登山隊に提供できる商品のポテンシャルがあると考えています。
この活動は彼なしにできません。
地元雇用の2名のアシスタントも日々、アンタルケを献身的にサポートしています。
育苗の拠点、苗木育成センター
苗木の生産は、村の中心地に建設した苗木育成センターで実施しています。
センターは2015年に建設を開始し、2016年に完成しました。
場所は村の中心にあり、またサマ村を訪れる外国人トレッカーが立ち寄れる場所でもあります。
住民にも旅行者も立ち寄りやすい場所に設置しました。
苗木の育苗には豊富な水が必要です。
サマ村には上下水道がありませんので、水の確保も重要なポイントです。
そのため育苗所は、水を汲みやすい、小川の近くでもあります。
育苗所は石の壁で囲いました。
現状では、サマ村で自由に放牧されている家畜は、柔らかい新芽が好物です。
そのため食害から苗木を防ぐ必要があり、石を切り出し積み上げた伝統的で壁で苗畑を守っています。
苗木は順調に成長中
苗木の成長は総合的にみて順調です。
2016年にプロジェクト初めて播種して育苗した苗木は、今年植栽できるサイズまで育ちました。
昨年2017年から育苗をスタートした苗木は、来年植栽可能なサイズに育ちそうです。
今年2018年は、5月に播種が終わりました。
2020年までの計画ではトータルで30000株を植栽予定です。
2016年3000株 モミ、マツ、カラマツ
2017年12000株 モミ、マツ、カラマツ、カンバ
2018年15000株 モミ、マツ、カラマツ、カンバ
育苗は、現地に自生している木々の種子の採集からスタートしています。
村は物流が良くないため、できるだけ何事も現地で対応可能なアナログな方法を取り入れています。
はじめは山に自生している実生を使用する山引き苗の使用も検討しました。
しかし、事前調査をしたときに、ヤクをはじめとする家畜が村全体に長年放牧されていたため、家畜の食害によって、自然に生えた実生がありませんでした。
生産中の苗木は基本的にサマ村に自生する種を選んでいます。
サマ村の森は、標高や場所によって異なりますが、モミ、カラマツ、マツ、カンバ、シャクナゲなどが中心です。
その中から、比較的成長スピードが早く、植林地に適した種を考え、モミ、マツ、カラマツ、カンバを選んでいます。
種子は前年の秋に形質の良い母樹から採取しています。
種子を播種してから、苗木が植栽に適したサイズまで成長まで、現状で2年半要しています。
課題は虫害対策
総合的には順当な育苗ですが、気がかりなことは、虫害が発生していることです。
虫が育苗中の苗木の柔らかい樹皮を食べ、枯死に追い込んでいます。
現時点ではスタッフが、一つ一つのポット苗を点検し、虫を見つけたら手で潰すという方法をとっています。
3名の現地スタッフがいますが、そのうちの1名は、宗教上の理由で、殺生できないので、実質2名で15000株の苗木のチェックを対応しています。
現在、労力と時間がかかっているため、適切な農薬の使用を含む対策を検討しています。
次回は、植栽の状況と現地で開催したワークショップについて、お伝えします。