森をつくろう

REPORT報告:ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト

2016年11月 8日

%e3%82%b5%e3%83%9e%e6%9d%91%e8%8b%97%e3%81%a5%e3%81%8f%e3%82%8a-6 サマガオンでの森林再生プロジェクトに協力していただいている住友林業の中村健太郎氏、松根健二氏が、現地を訪問していただき、 現状の確認、今後の助言などを行っていただきました。 また、カトマンズから、MRTFN事務局のパサン・ダワ・シェルパと森林開発専門家のビーム・ラジ・ライ氏にも同行してもらいました。 以下、ビーム・ラジ・ライ氏の報告と写真です。 【報告書(ビーム・ラジ・ライ)】

・現地訪問 2016年10月13日~15日 ・サマガオン 森林再生プロジェクト 現地訪問メンバー  中村健太郎(住友林業株式会社)  松根健二(住友林業株式会社)  パサン・ダワ・シェルパ(MRTFN事務局)  ビーム・ラージ・ライ 1・現在進められている苗床作業とその進捗の視察 前回(4月)の私の訪問時に推奨したゴンバの土地に新たな苗床が、すでにできあがっていた。苗床小屋は、技術的に見て良好かつ適切な場所である。 基本的な苗床小屋に関する作業は、ほぼ完了していると思われた。石造の壁および苗床管理人の宿舎兼苗床小屋は出来上がっている。石壁はうまく作られている。 ただし、私の報告書では有刺鉄線のフェンスを勧めていたが、これは、まだ、設置されていない。 3千本の苗木(モミ、ブルーパイン、チシングそれぞれ千本)が施設内に作られている。この苗木は、2016年の3月から7月にかけてこの私有地の反対側(当初の苗床小屋)で発芽、成長し、現在、この場所に移植されたものである。苗木の状態は非常に良いと思われ、2018年の植林に向けて準備が進んでいる。 森林の表土である混合土壌は、他の森林地帯から採取され、ポリポットに充填されている。ポリポットは4インチx7インチサイズの黒色で、この温帯地域に技術的に適しており、苗床で苗木を長期に維持することができる。現在3つある苗木床に竹の茅葺屋根がなかった。これは、必ず必要なので、至急、手配するよう提言した。 来年(2017年)、この苗床で1万5千本の苗木を作る計画である。従って2017年3月までに、必要な種子の採取、表土の採取、苗木床の準備、苗床の屋根に使う竹・茅などの事前準備が必要である。

プロジェクトの看板
管理人宿舎
苗床小屋の全景
苗木のデータ、情報の収集をする

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左から2番目より、中村健太郎氏、ビーム・ラジ・ライ氏、松根健二氏、パサン・ダワ・シェルパ氏、ビル・バートル・ラマ氏、アン・タルケ・シェルパ氏
パサン・ダワ・シェルパ氏とアン・タルケ・シェルパ氏

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パサン・ダワ・シェルパがプロジェクトの現状を説明

・植林計画地域の訪問  視察チームは植林予定地域を訪れ、植林の適切性について確認した。森林監督官および元技術者として、私は、ネパールの植林システム、規則、規範に基づいて、植林スケジュール、必要な苗木、植林方法について中村氏、松根氏に説明を行った。以前に作成した現地技術報告書にある、選定した6か所の植林地域について説明した。それらの中で、私有地とゴンパの管理地区の植林地域は、まだ決められていなかった。しかしゴンバ管理委員会が、間もなく地域を決定する予定である。また私有地は、将来の所有者のニーズと希望によって決まる。  パサン・ダワ・シェルパと私は、二人に植林地域の保全計画について説明した。保全に関する他の選択肢についても述べた。有刺鉄線フェンスは高価で、多額の予算を必要とし、さらに将来的に環境に優しいやり方ではない。また数百トンの鉄、ワイヤーがこの地域に堆積することになる。このため我々は、より効果的と思われる森林監視員(Ban Heralo)による植林保護が好ましいことを説明した。このプロジェクトの提案書で、この地域のコミュニティから少なくとも2名の森林監視員を雇用することを提案している。この案は、この森林および環境が自分たちのものであるという意識を育て、現地レベルで雇用機会をもたらし、結果的に現地の人々の生活向上、さらに資材購入によるこの村からの資金流失を防ぐことに役立つ。  今回の訪問および調査の間に、中村氏、松根氏は、植林から1カ月、2カ月、3カ月後に事後調査を行い、消滅した苗木の数を調べて実際の死滅率を明らかにすることを提言した。一般的な植林の死滅率は約21%である。ただし、この率は、実際の天気、現地の気候、土壌の状況、湿度、および植林地域周辺の人々の活動によって変わってくる。さらに、指定植林地域に関して地理情報システム(GIS)およびグーグル・マップで、今後の実際の科学データを得る手段を模索することを推奨した。

植林地域の視察
森林種(モミ)の分析
サマガオンの自然林の種と景色

・現地の人々との交流およびミーティング  MEETS財団が、サマガオンのゴンパ地域で現地の人々との交流会を企画した。この会議には、村のラマ僧のトップ、地域の指導者および活動的なメンバーを含め約35名の現地コミュニティの人々が参加した。この交流の中で、訪問チームは、このプロジェクト、訪問の目的、森林再生プログラムを成功させるための将来の計画についてその概要を説明した。  MEETS財団の創設者で、サマの学校の校長先生でもあるビル・バートル・ラマが、訪問チームを歓迎し、現在進められている森林再生活動について説明した。さらに同氏は、MEETS財団の背景、活動、現地での貢献とコミットメントの重要性を説明した。ビル・バートル氏によれば、コミュニティは植林によって将来、素晴らしい緑の谷を作る夢を持っているとのことである。同氏は、ピーク・エイド・ジャパンによる資金支援、プログラム実行のための技術的支援、さらに予算の調整に関して手助け、支援してくれたMRTFN、さらに日本人専門家を含めた訪問メンバーに対して深い感謝の意を表した。  さらにカトマンズMRTFNの会長であるパサン・ダワ・シェルパが、植林を通してこの地域の環境を保全すること、そしてこの地域で森林再生に成功したクンブ地域の成功を再現することがこのプロジェクトの目的である、と述べた。さらに同氏は、MRTFNが、ピーク・エイド・ジャパンとMEETS財団の間において重要な役割を持っていることを付け加えた。その主な仕事は、ネパール政府から政府の許可を得ること、そして決められたガイドラインに沿ってプログラムの実行を支援することである。MRTFNは、また進捗状況を作成し、野口健の財団に報告し、MEED財団への資金移転に関して交渉し、プロジェクトに対す技術的アドバイスを行う。同氏は、将来、現地の人々がプロジェクトを成功させることができること、そしてサマの渓谷に沿って緑を増やすことに関して極めて重要な役割を果たすことを期待している。MRTFNはコミュニティとの接触を継続して行い、ときどきプロジェクト地域の視察訪問を行う。

パサン・ダワ・シェルパ氏が、会議でプロジェクトの概要を説明
ビル・バートル・ラマ氏が、現状の説明

・苗床の表土および種子採集地  チームは表土の採集地を訪ねた。アン・タルケ・シェルパ氏と現地の人々が、昨年、ポリポットに入れるための土を採取した場所である。アン・タルケ・シェルパ氏は、今年もこれまでこの地域から表土を集めている。調査した森林表土は良好であると判断され、必要な養分を持っている。しかし、採取場所が、現在の苗床から少し離れている。苗床管理人であるアン・タルケ・シェルパ氏が、施設の選定過程を説明し、さらに土壌採取の方法を実際に見せてくれた。  日本の二人は、土壌の質については満足したものの、苗床からより近い場所で堆肥肥料を使って土壌の混合を試みることを提言した。単一の土壌を採取し、養分の豊富な堆肥肥料を使い、一定の割合で混合することをアドバイスした。これは、はるか遠くから土壌を運んでくるよりも良いだろう。自然にある表土は、将来的に不足するだろう。従って、上記のような代替オプションを採用することが将来的に良いはずである。中村氏は、堆肥肥料を作るための簡単なガイドラインを提供し、森林地域からではなく、苗床での混合にこれを使うことを推奨した。  さらにアン・タルケ・シェルパ氏は、種子は表土と同じ場所、および学校の敷地周辺から採取すると説明した。種子の採取に最も適している時期は11月である。現在、管理者はモミ、松、チシングの種子の採取を計画している。中村氏、松根氏は、混合植林するために、さらに現地にある2つの種、つまりネズとカバノキの苗木を育てるよう提言した。なぜなら、混合林の方が植林にとって良く、植林科学でより環境に優しいやり方のベストプラクティスの1つとされているからだ。 ・結論および提言  今回の訪問は、進行中のプログラムの実践にとって非常に有益で、それを後押しをするものであった。チームは苗床での苗木の育成、苗床で完了した作業について、その進捗と状況を確認した。さらに我々は、現地の人々と交流し、プロジェクトの背景、計画、さらにMRTFN、寄付者、技術チームの異なった役割に関して明確なメッセージを伝えた。海外の技術エキスパート、組織のマネージャーは親交を深め、関係するステークホルダーはプロジェクトの進行に関して理解を深めた。  今後の計画として、1万5千本の苗木に関するすべての資材を管理し、1名の機敏で情熱を持った苗床管理アシスタントをできるだけ早く雇用するべきである。 また、苗床小屋の入り口を改装し、MRTFNおよびMEETS財団のロゴを、苗床小屋の看板に付け加えるべきである。ビジター帳簿を1冊準備するのもよいと思われる。

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