2006年5月 2日
我が隊の楽しい仲間、11人のシェルパ達。彼らの役割は、一つは私達とゴミを拾うこと。そして、もう一つは頂上へ向けてのルート工作をし、キャンプを上へ上へと設営していくこと。今回は、C1(5700m)、C2(6400m)、C3(6900m)、C4(7400m)という四つのキャンプを作り、頂上へアタックする計画だ。
クライミング・リーダーのペンバ・ドルジを筆頭に、彼が選んだ強者シェルパ達が、恐るべきマナスルのセラック(氷塔)帯を縫うようにして、雪崩の危険を出来るだけ回避して、頂上へ向かうルートを引いていく。危険な場所や、技術的に困難な場所にはフィックスロープを張る。サーダーとクライミング・リーダーが相談して、荷揚げ部隊とルート工作部隊に分かれる。そして、休養日ももちろん作る。高所では連日の行動は禁物だ。例え山岳民族のシェルパ達であろうとも、高所での過労は体を蝕む。
今日は、ルート工作の初日。ペンバ・ドルジ、プルバ、ラクパが先行し、カジ、パサンと共に小西さんと私が後続した。キャンプ1のすぐ上に、最も雪崩の危険があると思われる、大セラック帯があり、ここの通過が最も緊張させられる部分だ。シェルパ達も、このエリアに入る前に一寸休憩し、気を引き締めて歩き出す。急いで通過したいけれど、こんな高所で急いで行動したら心臓が飛び出してしまう。いくら高所順化のためとはいえ、何度も通りたくはないところだ。それでも、エベレスト始め、ヒマラヤで鍛えられたシェルパ達は何とも楽しげに、この雪と氷の世界を行ったりきたりしている。ここは、確かに彼らの世界なんだなぁと、改めて思うのだった。
そんな彼らも、もちろん雪崩を一番恐れている。互いに注意しあったり、オムマニペメフムとチベット仏教のお経を唱えながら上り下りしている。素朴で親近感のある彼らの笑顔の裏には、雪崩で亡くなった仲間達への消えない想いがきっといくつもある。
谷口ケイ