マナスル基金

REPORTマナスルはお前らの神だろ

2006年4月16日

 

 高所順応のためベースキャンプに向かう道のりの途中まで登った。 3 時間ほどかけて300 m ゆっくりゆっくり登る。途中、氷河湖を見下ろしたが、美しかった。この辺りは日本の山のように白樺やコケが生えている。ヒマラヤで初めて白樺と出会った。日本出発前に三浦雄一郎さんの低酸素室でトレーニングを繰り返し行ったためか、3800 m まではいがいと楽に登れた。他のメンバーもみな元気で食欲旺盛。特に小西浩文さんは馬みたいに食べる。平気で 3 人前は平らげる。こっちは満腹で「もう食べられない」と言えば「ケン、そりゃダメだよ~そんなんじゃマナスル登れないよ」といいながら一人もくもく食べる姿にみな唖然。食料足りるかなぁ~と不安。

 順化から戻りサマ村の長老にお話を聞いた。ギャムソ・ラマさん(73)とジグメ・ラマさん(81)。 50 年前の日本隊初登頂の事をよく覚えていた。

  

「マナスルは私たちの神だ。いきなり日本人がやってきて私たちの神に登ると言う。彼らは 3 回来たが、一回目に挑戦して失敗して帰っていった後に、マナスルの氷河で雪崩が発生してね、お寺まで雪に潰されて 3 人が死んだ。神が怒ったと私たちは思ったよ。そうしたらまた日本隊がやってきた。そこで私たちと日本隊は喧嘩になった。ただ、日本人達がお寺に寄付金を出してくれた。金額は覚えていないけれど、日本人が寄付金を出してくれたことで村中の人が喜んだ。村の人が喜ぶってことは、私たちの神様も喜んでいる。だからマナスルに登ることを許したんだよ」とギャムソ・ラマが話しジグメ・ラマさんは「私たちは山に登ることの意味が分からなかった。だから登ろうがどうしようが興味なかった。

 ただ、私たちの領域にやってきたんだから、自分たちのためだけじゃなくて私たちの文化も理解してまたマナスルを大切にしてほしい」とそして「氷河は登山隊のごみで汚されている。その汚れが水を汚くして私たちの生活が困るんだ。だからあなた達がきれいにしてくれるのは有難いよ」と締めくくった。帰りに若手のお坊さんが「マナスルは日本人にとっての神だろう」と質問され返事に困ってしまった。彼らの神様に日本人が登った。

 その意味をどれだけの日本人が感じ取っているのだろうか?そもそも霊峰である富士山がごみだらけの日本社会。「神聖なる領域」それは自然に対して人は謙虚であろうと示すためなのだろうか、どうであれ「神聖な領域」を身近に感じながら生きている彼らの姿が美しかった。明日はベースキャンプまで高所順応で登り夕方にはサマ村に帰ってくる予定です。

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