2002年5月14日
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今、野口さんは、サウスコルのゴミ回収に向かっていますが、今回はこれまでに、ベースキャンプに集められたゴミについてレポートしてみたいと思います。
前のレポートでもご説明しましたが、野口隊には集めたゴミを収容するゴミ・テントがあります。ベースキャンプ周辺、キャンプ2、キャンプ3、サウスコル(キャンプ4)で回収されたゴミが種類ごとに分別されて入れられています。大人が5人充分に寝られる広さがあるゴミ・テントは、すでに3分の2ほどゴミで埋まっています。エベレストのゴミは、登山に欠かせない装備と生活に必要な食料などのゴミに大別できます。
生活関係のゴミでもっとも目立つのが、缶詰です。ときどき中身が入ったものもあります。食べられそうもありませんが・・・。缶詰は比較的年代の古い隊ものが多く、新しい隊になるほど、レトルトパックなど食料品のパッケージが目立つようになります。
缶詰もパッケージも商品名などの文字から、どこの国のものかが容易に判別できるのですが、野口さんのおっしゃる通り、日本、韓国のものがダントツで多く見つかったのは残念でなりません。アメリカ、イギリスなど英字で書かれたものの総数よりも日本のゴミが圧倒的に多いのはだれの目にも明らかです。
その他には、調理器具や調理に使うガスカートリッジ、食器、ビン、電池などがあります。
登山装備では、アイスフォールを渡るために使われるはしごの残骸やロープなどが見つかりました。これは、どこの国、隊のものと断定することが難しいゴミで、その年ごとに参加した隊で責任を持って回収しなければいけないのだなーと思いました。
一方、高所登山で使われる酸素ボンベは年代や隊名が書いてあるので持ち主が明確にわかります。高所で空になった酸素ボンベを降ろすのには余力が必要で、登頂する以上に大変なことだとは思いますが、「残していいのは思い出だけ」「とっていいのは写真だけ」そして、足あとすら残すことが問題になっている現代ではやはり、持ち帰ることが必要だと思います。
登山装備のゴミには、ほかにテントや寝るときに下に敷いて使うマットなどが見つかっています。
先日、サウスコルに向かって出発した野口さんらを見送った帰りにアイスフォール帯周辺で私もゴミ拾いをしました。
さすがに酸素ボンベは落ちていませんでしたが、缶詰や食品パッケージ、引きちぎれたロープなどがあちらこちらに散らばっていました。缶詰ひとつ拾うのにも、かたーい氷を砕いて取り出す必要があって、息は切れるし、想像以上に疲労しました。捨てるのって簡単ですが、拾うのは本当に大変です。すこし、ゴミを捨てた人を恨んでしまいそうです。
だけど、ベースキャンプに帰ってきてこのことをシェルパのニマ・オンチュウに話したところ
「低いところ(ベースキャンプ周辺)の氷はソフトだから、イージーね! キャンプ3はぜんぶ、ブルーアイスで硬いからベリーハードよ!」
と、私達の苦労は上部キャンプに比べると、全くたいしたことないのでした(笑)。
酸素の薄いところでのゴミ回収は、ベースキャンプにいる私でも想像できないほど大変な作業です。一歩足を上に進めること、ピッケルを振るってブルーアイスを砕くこと、ゴミを回収するための一つ一つの行動が命を削ります。野口隊が無事、「TOP OF THE WORLD」の清掃をしてベースキャンプに戻ってきてくれることと、高所での彼の荒い息遣いや咳が、日本をはじめ各国にあるゴミを無くす「風」になることを信じてやみません。
2002年5月14日
ベースキャンプより 谷口けい